ワールドモデルとは —— 行動の結果を予測するAIの仕組みと、Google・Meta・NVIDIAの研究・限界

ワールドモデルとは —— 行動の結果を予測するAIの仕組みと、Google・Meta・NVIDIAの研究・限界

AIがその場で作った世界を、キーボードで歩き回れる――。GoogleのGenie 3のデモは、ゲームのように見えますが、実際には「ワールドモデル」と呼ばれるAIの研究です。ワールドモデルは、世界の今の状態と、行動したらどう変わるかを予測するAIモデルを指します。

本記事では、コップを押す例からワールドモデルの考え方を説明し、ChatGPTなどのLLMとの違い、仕組みを整理します。そのうえで、Google DeepMindのGenie 3、MetaのV-JEPA 2、NVIDIAのCosmos 3、Minecraftで「想像の中の練習」だけでダイヤモンドを取ったDreamer 4を紹介し、使い道と、「リアルに見えること」と「物理的に正しいこと」は別だという限界、ニュースの見方までまとめます。

情報は2026年10月16日時点のものです。料金・提供範囲・数値は変わることがあります。出典は記事末尾にまとめています。

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この記事のポイント
  • ワールドモデルは、行動したら世界がどう変わるかを予測するAI。
  • Google・Meta・NVIDIAの3社は、それぞれ重点の置き方が違う。
  • 映像がリアルに見えることと、物理的に正しく予測できることは別。

基礎知識:ワールドモデルとLLMの違い

「ワールドモデル(世界モデル)」は、現実の世界や3Dの空間について、物理の法則・物の配置・時間による変化を学び、「いまの状態からある行動をとったら、次に世界がどう変わるか」を予測するAIモデルです。Google DeepMindの「Genie 3」、Metaの「V-JEPA 2」、NVIDIAの「Cosmos 3」などが代表例です。

ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が、文章の流れから次の言葉を予測するAIであるのに対し、ワールドモデルは、空間の状態と行動から次の状態を予測するAIです。ロボットや自動運転車、ゲームの中のAIが、危険な動作を実際に試す前に、頭の中で何通りもの結果を予測し、安全で目的に合った行動を選べるようになります。

作り方には大きく2つの考え方があります。Genie 3のように、操作に合わせて未来の映像のコマを直接作っていく方法と、V-JEPA 2のように、映像の細部を省いて物の位置や動きといった要点(潜在空間)の上だけで未来を予測する方法です。

主要キーワード・技術用語の定義
ワールドモデル
環境のいまの状態とAIの行動から、この先に環境がどう変わるかを予測するAIモデル。ロボットの制御や自動運転の計画の土台になる。
潜在空間での予測
映像を1画素ずつ作る代わりに、映像から取り出した要点(数値の並び)の上で状態の変化を計算する方法。計算の負担を抑えて、速く行動の計画を立てられる。
想像の中での訓練
実機や本番の環境を動かす代わりに、学習済みのワールドモデルが作る仮想の環境の中で、AIに何度も試行錯誤させる方法(Dreamer 4など)。

AIが作った世界を歩く

公式の資料から引用
Google DeepMind「Genie 3: A new frontier for world models」(2025年8月5日)の画像
  • 矢印キーで動かせる
  • AIがその場で作った映像
出典:Google DeepMind「Genie 3: A new frontier for world models」(2025年8月5日)の画像

この映像はゲームではありません。GoogleのAIが、矢印キーの操作に合わせて、世界の続きをその場で作り出しています。[s1]この技術が、いま注目されている「ワールドモデル」です。ロボットやAIエージェントの将来にも関わる、重要な研究分野です。

ワールドモデルとは何か

押す前に、結果を想像する

要点

押す前に、結果を想像する

いま
いま

コップが立っている

押すと
押すと

倒れて水がこぼれる

つかむと
つかむと

こぼさず持てる

テーブルの端にあるコップを横から押したらどうなるか、と聞かれれば、多くの人は「倒れて水がこぼれる」と答えるでしょう。まだ押していないのに、結果を想像できるのです。そっとつかめばこぼさずに持てることも、頭の中で分かります。いくつもの行動の結果を予測できれば、失敗しにくい行動を選べます。

ワールドモデル
キーワード ワールドモデル

世界の変わり方を予測するAI

ワールドモデルは、この「行動する前に結果を予測する」ことをAIに持たせたものです。Google DeepMindは、環境がどう変わるかと、自分の行動がそれにどう影響するかを予測できるAIと説明しています。[s1]

ワールドモデルに必要な3つの力

要点

ワールドモデルに必要な3つの力(Metaの説明)

理解

物や動きを見分ける

予測

世界がどう変わるか

計画

目標への行動を決める

Metaは、ワールドモデルに必要な力として3つを挙げています。見えている物やその動きを見分ける「理解」、世界がどう変わるか、自分が動いたらどうなるかを考える「予測」、そして目標に向かって行動の順番を決める「計画」です。[s3]

ChatGPTとの違い

LLM
LLM
  • 文章で答える
  • 言葉の知識と推論
VS
ワールドモデル
ワールドモデル
  • 変化を予測する
  • 映像や行動から学ぶ

ChatGPTのようなLLMも、言葉の上で物の動きを推論することはできます。ただ、映像やロボットの動きから次の状態を細かく予測するのは、別の仕事です。

組み合わせて使う

流れ

組み合わせの例

言葉で目的を理解(LLM)
結果を試す(ワールドモデル)
選んだ動きを実行

両者は組み合わせて使うこともできます。たとえば、言葉で示された目的をLLMが理解し、ワールドモデルで行動の結果を試してから、選んだ動きを実行する、という使い方です。ワールドモデルが登場しても、LLMが不要になるわけではありません。

AIの頭の中の仕組み

ワールドモデルを使うAIのくり返し

手順

ワールドモデルを使うAIのくり返し

STEP 1
見る

今の世界を知る

STEP 2
予測

動いたらどうなる?

STEP 3
比べる

よい未来を選ぶ

STEP 4
動く

やって、また見る

ワールドモデルを使うAIは、大きく4つのことをくり返します。まず、物の位置や動き、周りの様子を見て、いまの世界を知ります。次に、押す・つかむ・進むといった行動をとったらどうなるかを予測します。そして、予測した未来を比べて、安全で目標に近いものを選び、実際に動きます。動いたら結果をまた見て、くり返します。

2つの作り方

映像を作る
映像を作る
  • Genie 3・Cosmos 3
  • コマを作って未来を見せる
VS
要点を予測する
要点を予測する
  • V-JEPA 2
  • 要点の変化で計画する

作り方は大きく2つに分けると分かりやすくなります。[s1][s3][s5]1つは、映像のコマを作って未来を見せる方法で、Genie 3やCosmos 3がこちらにあたります。もう1つは、映像の要点だけを数値にした「潜在空間」の中で変化を予測し、計画に使う方法で、V-JEPA 2がこちらです。動画を1コマずつすべて作るのは計算が重いため、要点の中で予測する方法が考えられています。[s3]

Google —— Genie 3

Genie 3の仕様(Googleの発表)

数字

Genie 3 の仕様(Googleの発表)

24 コマ/秒
リアルタイムで生成
720 p
画質
数分
世界の一貫性が続く

出典: Google DeepMind「Genie 3」(2025年8月5日)

冒頭の世界を作ったのが、GoogleのGenie 3です。文章で説明した世界をその場で作り、その中を動き回れます。Googleの発表では、1秒に24コマ、画質は720pで、世界の一貫性が数分ほど続きます。[s1]

一貫性とは

公式の資料から引用
Google DeepMind「Genie 3: A new frontier for world models」(2025年8月5日)の図
  • 0:00 左にあった木
  • 0:40 戻っても同じ位置
出典:Google DeepMind「Genie 3: A new frontier for world models」(2025年8月5日)の図

ここでいう一貫性とは、見ていた物がいったん視界の外に出て戻ってきても、同じ場所にあることです。図では、0:00の時点で左にあった木が、0:40でも同じ位置にあります。Genie 3は、直前の約1分の様子を見ながら次のコマを作っています。[s1]なお、Googleの説明によれば、Genie 3は3Dの形を持っておらず、操作に合わせて1コマずつ作っています。[s1]

Project Genieで試せること

要点

Project Genie でできること(Googleの発表)

世界を作る

文章や画像から

探索する

歩く・飛ぶ・運転

リミックス

ほかの世界を作り変える

2026年1月には「Project Genie」として、文章や画像から世界を作って歩く・飛ぶ・運転するなどで探索できるようになりました。[s2]ただし、発表時点では米国のGoogle AI Ultraの購読者向けの試作品で、1回の生成は60秒までです。操作が遅れることもあります。[s2]

Meta —— V-JEPA 2

公式の資料から引用
Assran ほか「V-JEPA 2」(Meta、2025年6月)の論文の図
  • 動画100万時間と画像100万枚
  • ロボットのデータは62時間
出典:Assran ほか「V-JEPA 2」(Meta、2025年6月)の論文の図

MetaのV-JEPA 2は、動画から世界の動きを学び、ロボットの計画に使うモデルです。まず、ラベルのない動画100万時間以上と画像100万枚で、世の中の動きを学びます。そのうえで、ロボットの映像と操作のデータを62時間分だけ追加で学びます。ロボットが働く場所のデータは不要だと、Metaは説明しています。[s3]

V-JEPA 2の計画のくり返し

流れ

V-JEPA 2 の計画のくり返し

動きの候補を頭の中で試す
ゴールに近い動きを選ぶ
1手だけ動いて、また見る
↻ 見直して、また計画

ロボットを動かすときは、ゴールを画像で渡します。V-JEPA 2は、いまの様子とゴールを見比べ、動きの候補を何通りも頭の中で予測して、ゴールにいちばん近づくものを選びます。そして1手だけ動いたら、また様子を見て計画し直します。[s3]

V-JEPA 2の成績

数字

V-JEPA 2 の数字(Metaの発表)

100万 時間+
動画で学んだ量
62 時間
ロボットのデータ
65〜80 %
つかむ・置く成功率

出典: Meta AI(2025年6月11日)。成功率は新しい物体・環境での研究室の実験

Metaの研究室での実験では、初めて見る物や場所で、物をつかんで置く作業の成功率は65〜80%でした。[s3]裏を返せば2〜3割は失敗しており、Metaも、もっと長い作業の計画はこれからの課題だとしています。[s3]

NVIDIA —— Cosmos 3

公式の資料から引用
NVIDIA Blog「How Cosmos 3 Helps Physical AI Think Before It Acts」(2026年5月31日)の画像
  • 映像を見て理解
  • いくつもの未来を考える
  • 選んだ動きを実行
出典:NVIDIA Blog「How Cosmos 3 Helps Physical AI Think Before It Acts」(2026年5月31日)の画像

NVIDIAは2026年5月31日に、Cosmos 3を発表しました。NVIDIAはこれを「考えてから動く」AIと説明しており、映像を見て理解し、いくつもの未来を考えて良いものを選び、選んだ動きを実行する流れを示しています。[s5]

Cosmos 3がまとめて扱うもの

要点

Cosmos 3 がまとめて扱うもの(NVIDIAの発表)

文章

質問や指示

画像・動画

見て理解、作る

音

まわりの音

行動

ロボットの動き

Cosmos 3は、文章・画像・動画・音に加えて、ロボットの関節の角度やつかむ位置といった「行動」を表す数値まで、まとめて扱えます。NVIDIAはこれを、世界初の完全にオープンな「オムニモデル」と呼んでいます。[s5]

要点

Cosmos 3 を使い始めている会社(NVIDIAの発表)

ロボット

Agile Robots・Skild AI など

自動運転

Li Auto

街・工場のカメラ

Linker Vision など

NVIDIAによると、ロボットや自動運転などの会社がすでに使い始めています。また、訓練と評価にかかる期間を「月から日へ」縮められると説明していますが、発表には裏づけの数字が載っていません。第三者の検証ではなく、会社の主張として受け止めておく必要があります。[s5]

3社の方向性の違い

比較表

3社の方向性のちがい

項目GoogleMetaNVIDIA
重点操作できる世界理解と計画ロボット向け
出すもの映像要点の予測映像・行動など
見どころ数分の一貫性62時間で動くモデル公開

出典: Google DeepMind・Meta・NVIDIAの発表。同じ条件で比べた表ではありません

3社は、重点の置き方が異なります。Googleは操作できる世界を作ること、Metaは理解と行動の計画、NVIDIAはロボットなどに向けた土台となるモデルに力を入れています。[s1][s3][s5]同じ条件で比べたものではないため、どれが優れているとは言えません。

Dreamer 4 —— 想像の中で練習する

モデルの中で練習
モデルの中で練習

もう1つの研究例がDreamer 4です。Minecraftで、本物のゲームの環境に一度も触れずに、ダイヤモンドを取ったAIです。人のプレイ動画(約2,500時間)と操作の記録だけからゲームの世界のモデルを作り、そのモデルの中でAIが何度も練習しました。論文はこれを「想像の中での訓練」と呼んでいます。[s8]ロボットでは、実機での失敗が故障や危険につながるため、この考え方は重要です。

公式の資料から引用
Hafner ほか「Training Agents Inside of Scalable World Models」(Dreamer 4、2025年9月)の図
  • 鉄のつるはし 29%
  • ダイヤモンド 0.7%
出典:Hafner ほか「Training Agents Inside of Scalable World Models」(Dreamer 4、2025年9月)の図

1000回の挑戦のうち、鉄のつるはしまで届いたのは約29%、ダイヤモンドまで届いたのは0.7%でした。[s8]数字は小さく見えますが、2万回以上の操作を画面の映像だけから選ぶ難しい課題で、ここまで届いたのは初めてです。[s8]

ほかの手法との比較

グラフ

鉄のつるはしまで届いた割合(論文の実験)

Dreamer 4 世界モデルの中で練習
29%
別のAI 同じデータで学習(VLA)
11%
以前の手法 棒までで、届かなかった
0%
ダイヤモンドまで届くのは、0.7%

出典: Hafner ほか(Dreamer 4、2025年9月)の図。Minecraft・1000回の挑戦

同じデータで学んだ別の手法(VLA)は、鉄のつるはしまで届いたのが11%でした。[s8]ただし、これはゲームでの実験であり、ロボットでの結果ではありません。[s8]

生活はどう変わるか

ワールドモデルの使い道(研究・開発中)

要点

ワールドモデルの使い道(研究・開発中)

自動運転

まれな場面を練習

家庭のロボット

失敗を減らす練習

工場・倉庫

動かす前に試す

AIエージェント

結果を見てから動く

考えられる使い道は、主に4つあります。いずれも研究・開発中の段階です。1つ目は自動運転で、WaymoはGenie 3を土台にしたモデルを発表し、竜巻やゾウが道路に現れるような、実際には集めにくい場面を作れると説明しています。ただし、Waymoの発表には第三者の評価の数字は載っていません。[s9]

2つ目は家庭のロボットです。家の中は予想外のことばかりで、家事をすべて任せられるようになるには、まだ研究が必要です。それでも、実機で失敗するリスクやコストを減らせる可能性があります。3つ目は工場や倉庫で、実際に動かす前に操作を試せるかもしれません。NVIDIAは、ロボットの会社が行動のデータ作りにCosmos 3を使っていると発表しています。[s5]

AIの練習用の世界
AIの練習用の世界

4つ目はAIエージェントです。Google DeepMindは、3Dの世界で動くAI「SIMA」に、Genie 3が作った世界の中で目標を与える実験を行いました。[s1]

いまの限界

こうした研究があっても、ワールドモデルが世界の物理を理解したとは、まだ言えません。きれいな映像を作ることと、物理的に正しい未来を予測することは別の問題だからです。

Genie 3の限界(Googleの説明)

要点

Genie 3 の限界(Googleの説明)

行動が限られる

直接できる行動の範囲

実在の場所

地理を完全には再現しない

続く時間

数分で、数時間ではない

Google自身も、Genie 3の限界を挙げています。AIが直接とれる行動の範囲はまだ限られていること、実在の場所を完全な地理の正確さでは再現できないこと、そして続けられるのは数分で、数時間ではないことです。[s1]

物理のルール違反を見抜くテスト

要点

物理のルール違反を見抜くテスト

人

ほぼ満点

動画のAI

偶然に近い成績

出典: Meta AI(2025年6月11日)。動画のAIは当時のモデル

Metaが公開した、物理のルールを破る場面を見抜くテストでは、人はほぼ満点だったのに対し、当時の動画のAIは偶然に近い成績でした。[s3]

物理シミュレーターとの違い

比較表

物理シミュレーターとのちがい(一般的な整理)

項目シミュレーターワールドモデル
しくみ人が式を書く映像から学ぶ
得意書いた範囲は正確幅広い場面
苦手書いてない所物理の保証なし

昔からある物理シミュレーターとの違いも整理しておきます。物理シミュレーターは、人が式を書いて動かすため、書いた範囲では正確です。ワールドモデルは映像や行動から学ぶため、幅広い場面を作れますが、物理の正しさは保証されません。どちらが上というより、役割が違います。現在は、LLMや画像も読めるAIとワールドモデルを組み合わせる方法が注目されています。

ニュースの見方

手順

ワールドモデルのニュースの見方

STEP 1
条件を見る

長さ・画質・何回の実験か

STEP 2
どこでの話か

ゲーム・シミュレーション・実機

STEP 3
誰の評価か

会社の発表か、第三者か

ワールドモデルのニュースを見るときは、3つの点に気をつけるとよいでしょう。1つ目は条件で、映像の長さや画質、何回の実験の結果かを確かめます。2つ目は、どこでの話かで、ゲームなのか、シミュレーションなのか、本物のロボットなのかを見ます。3つ目は、誰の評価かで、会社の発表なのか、第三者の検証なのかを区別します。

実際に試してみたい人は、モデルが公開されているV-JEPA 2とCosmos 3から始めることができます。[s3][s5]

まとめ

ワールドモデルは、行動したら世界がどう変わるかを予測するAIです。Googleは操作できる世界の生成、Metaは理解と計画、NVIDIAはロボット向けの土台と、3社は重点の置き方が異なります。[s1][s3][s5]

一方で、映像がリアルに見えることと、物理的に正しく予測できることは別です。会社の発表と第三者の検証を区別しながら、研究の進み具合を冷静に見ていく必要があります。

実践のポイント・まとめ

POINT 1

AIが先に結果を予想する仕組み

ワールドモデルを使うAIは、動く前に「こう動いたらどうなるか」をいくつも頭の中で試し、いちばん失敗しにくい動きを選びます。コップを押す前に、こぼれると想像する人間と同じ考え方です。

POINT 2

送る前にAIに反応を予想させる

同じ考え方は身近にも使えます。メールの文案をいくつか作ってAIに相手の受け止め方を予想させ、いちばん角が立たないものを選んでもらいましょう。ただし、予想は外れることもあるので、最後は自分で判断します。

POINT 3

AIが作った動画の不自然さを見抜く

物が急に消える、すり抜ける、影の向きがおかしいなど、物理のルールに反する場面がないかを見ましょう。2025年6月のMetaのテストでは、動画のAIはこうした違反を見抜くのが苦手でした。このチェックも完ぺきではないので、目安として使ってください。

出典・参考文献

検証ファクト一覧を表示する(全23項目)
ID 確認した事実・仕様 出典 注意・補足
F1 ワールドモデルの定義(DeepMind):「世界についての理解を使って、その一部をシミュレートできるAI。環境がどう変わるかと、自分の行動がそれにどう影響するかを予測できる」 [s1]
F2 Meta の説明:人は頭の中に世界の内部モデル(内部シミュレーター)を持ち、行動する前に結果を想像して、目標に合う行動を選ぶ。ワールドモデルにほしい力は ①理解(物・動きを見分ける)②予測(世界がどう変わるか、自分が動いたらどうなるか)③計画(目標への行動の並びを決める) [s3]
F3 Genie 3(2025-08-05):文章から、リアルタイムで動き回れる世界を生成。24フレーム/秒・720p・数分間一貫性を保つ。前の約1分前までの様子を見て次のコマを作る [s1] 「largely(おおむね)consistent」。会社の発表
F4 Genie 3 の世界は、3Dの形を持たず、コマごとに(行動に応じて)作られる。コマを作るたびに、それまでの軌跡を見直す必要があり、誤差がたまりやすい [s1] 一貫性は「創発的な能力」と説明
F5 Genie 3 の例:ギリシャ神殿の世界で、左にあった木が、視界の外に出たあと戻ってきても同じ位置にある(0:00・0:20・0:40の図) [s1]
F6 Genie 3 の限界(公式):①エージェントが直接できる行動の範囲が限られる ②複数のエージェントの複雑な相互作用は研究課題 ③実在の場所を完全な地理の正確さではシミュレートできない ④読める文字は、入力の説明に書いたときだけ出やすい ⑤連続の操作は数分で、数時間ではない [s1]
F7 Genie 3 は DeepMind の SIMA(3D世界の汎用エージェント)の訓練・試験用の世界を作る実験に使われた。「Genie 3 はエージェントの目標を知らず、行動に応じて未来を作るだけ」 [s1]
F8 Project Genie(2026-01-29):Google AI Ultra(米国、18歳以上)の購読者に提供。文章・画像から世界を作り、歩く・飛ぶ・運転するなどで探索し、リミックスできる。**1回の生成は60秒まで**。操作しにくい・遅れが出る・現実の物理や指示にあまり従わないことがある。「promptable events」(探索中に世界を変える機能)はまだない [s2]
F9 V-JEPA 2(Meta、2025-06-11):1.2B パラメータ。ラベルなしの動画100万時間以上と画像100万枚で事前学習 → ロボットのデータ(映像+操作)**62時間**(DROID)で追加学習すると、計画に使える。ロボットの置かれる環境のデータは要らない(ゼロショット) [s3]
F10 V-JEPA 2 の計画のしくみ:ゴールを**画像**で渡す。今の状態とゴールをエンコーダーで「表現」にして、いくつもの候補の行動を予測器で頭の中で試し、ゴールにいちばん近づくものを選ぶ。1手だけ実行して、また計画し直す(モデル予測制御) [s3] [s4]
F11 V-JEPA 2 の成績:新しい物体・新しい環境でのつかむ・置く(つぎつぎのサブゴール画像つき)が成功率 **65〜80%** [s3]
F12 V-JEPA 2 の限界(Meta):「いまは1つの時間の幅で学び、予測する」。食洗機に食器を入れる、ケーキを焼くなど、複数の時間の幅の計画は今後。感覚(視覚・音・触覚)をまとめるのも今後 [s3]
F13 Meta が同時に出した物理推論のテスト(IntPhys 2・MVPBench・CausalVQA):人は 85〜95% 正解するが、いまの動画のモデルは「偶然に近い」成績(IntPhys 2)。人とモデルの差は大きい [s3]
F14 Cosmos 3(NVIDIA、2026-05-31):「世界初の完全オープンなオムニモデル」。文章・画像・動画・環境音・行動(ロボットの関節の角度・つかむ位置など)を入力・生成できる。理解する部分(自己回帰のVLM)と作る部分(拡散)の2つを組み合わせた構造 [s5] [s6]
F15 Cosmos 3 のサイズ:Super 64B・Nano 16B(公開ずみ)、Edge(近日。2026-08 に 4B 版の記事) [s5]
F16 Cosmos 3 の使い道:①理解して考える VLM ②物理の世界を動画で予測する世界モデル ③ロボットを訓練する世界行動モデルの土台。例:ロボットの行動データを作る(Agile Robots)、自動運転の希少な場面(Li Auto)、倉庫の安全・街のカメラ [s5] [s6] 採用企業は NVIDIA の発表で名前が出た会社
F17 Cosmos 3 の主張:「訓練と評価の期間を月から日へ」「オープンなモデルの中で、世界の生成の正確さのリーダーボードで1位」 [s5] 会社の発表。「months to days」の裏づけの数字は発表にない
F18 Dreamer 4(2025-09-29):Minecraft で、環境に触れず(人のプレイ動画 約2,500時間+操作の記録だけ)で、**ダイヤモンドを取った初めてのエージェント**。2万回以上のマウス・キーボード操作の並びを、画面の映像だけから選ぶ課題(慣れた人で約20分) [s8]
F19 Dreamer 4 の成績(1000回の挑戦):石のつるはしまで 90%超、**鉄のつるはし 29%**、**ダイヤモンド 0.7%**。比較:VLA(Gemma 3)は鉄のつるはし 11%、OpenAI の VPT(追加学習版)は棒までで鉄のつるはしに届かず [s8]
F20 Dreamer 4 の「想像の中での訓練(imagination training)」:学んだ世界モデルの中で、行動を強化学習で練習する。本物の環境とのやり取りはない(オフライン) [s8]
F21 Waymo World Model(2026-02-06):Genie 3 を土台に、運転向けに追加学習。カメラとLiDARの両方の映像を作る。竜巻・ゾウ・ライオン・恐竜の着ぐるみの人・洪水・雪の道路など、実際にはほとんど集められない場面を作れる。操作は「運転の行動」「道路の配置」「言葉」の3つで変えられる [s9] 会社の発表。ベンチマークや第三者の評価は載っていない。Waymo 車は約2億マイルの完全自動運転
F22 Waymo の説明:運転のシミュレーターの多くは、自社が集めた走行データだけで一から学ぶ。Genie 3 は大量の動画で事前学習ずみなので、走ったことのない場面も試せる [s9]
F23 Genie 3 の使い道(DeepMind):ロボットや自動運転などのエージェントを訓練する「無限に近い練習の世界」。エージェントの弱点を調べる試験にも [s1]

※ コップ・メール・AI動画・ゾウの絵は、説明のためのイメージ(生成イラスト)です。ロボットやAIのイラストは、各社の製品やロゴとは関係ありません。

※ 画面の図は、各社の発表・論文からの引用で、加工していません。Genie 3・Project Genie・Waymo・Cosmos 3 の説明は各社の発表で、独立した検証ではありません。V-JEPA 2 の65〜80%は Meta の研究室での実験、Dreamer 4 は論文の実験(Minecraft・1000回)です。

※ Project Genie は、発表の時点では米国の Google AI Ultra 向けの試作品で、国は順次拡大とされています。

※ ワールドモデルが「世界の物理を理解した」という意味ではありません。物理シミュレーターとの比較や、メール・AI動画の見方は目安です。